血まみれの人を幻視し、幽霊から霊告を受ける…二・二六事件の青年将校を魅了した、北一輝の「オカルト的魅力」の正体
学術文庫&選書メチエ編集部
*どんな思想を持っていたのか
いまから87年前の1936年2月26日、いわゆる二・二六事件が勃発しました。
この事件は、当時、内部に大きな政治的分裂を抱えていた陸軍の青年将校たちに率いられた部隊が決起したものです。
かれらは、天皇の最側近である鈴木貫太郎侍従長の官邸、首相官邸、警視庁、陸相官邸、天皇を輔弼する内大臣・斎藤実私邸、陸軍の教育をつかさどる教育総監・渡辺錠太郎私邸、大蔵大臣・高橋是清私邸などを襲い、実際に、渡辺教育総監、高橋大蔵大臣などを殺害。さらに4日間にわたって、麹町など東京の中心部を占拠しました。
しかし、最終的には昭和天皇による鎮圧の命令をきっかけに、幹部が逮捕される事態となり、事件は終幕を迎えます。
未曾有のクーデター未遂事件として知られるこの事件ですが、青年将校たちは、どのような思想を背景に、これほど大胆な行動に出たのでしょうか。
かれら青年将校に思想的な影響を与えたとされるのが、思想家の北一輝です。北は、事件ののち、青年将校の一部の幹部とともに死刑に処せられています。
北と青年将校の間に共有されていた思想とはどのようなものだったのか。大雑把に言えば、「元老、重臣、軍閥、財閥、官僚、政党等」を排除し天皇親政(天皇がみずから政治を行うこと)を実現すれば、日本はよくなるという発想ですが、細かいニュアンスを知るのに有用なのが、昭和に活躍した思想史の研究者・橋川文三(1922〜1983年)による研究です。
北が青年将校に与えた影響、北と青年将校の思想的な共鳴について、橋川はたとえば『昭和維新試論』において、青年将校の手記を引いた後でこのように述べています。
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